Indeiv
Tue Mar 17 2026 14:02:34 GMT+0000 (Coordinated Universal Time)

相関関数の摂動展開

相関関数の摂動展開について説明します。

character

参考文献:(Peskin & Schroeder, 1995)

自由場の理論のように厳密に解ける非線形な相互作用場の理論は二次元より上では知られていない。したがって我々は基本的に摂動論に頼らざるを得ない。そこで,摂動級数を簡単に計算できるようにしたい。最終的には観測量を計算することを目指すが,まずは相関関数の摂動展開を考えなければならない。そのためには相関関数を摂動展開しやすい形に書き換える必要がある。ここでは正準量子化の文脈で説明を与える。

2 点相関関数についての書き換えが分かれば,nn 点相関関数についての書き換えも簡単に分かる。したがって,以下では 2 点相関関数

ΩTϕH(x)ϕH(y)Ω \braket{\Omega|\mathrm{T}\phi_{\mathrm{H}}(x)\phi_{\mathrm{H}}(y)|\Omega}

についての書き換えを説明する。ここで Ω\ket{\Omega} は相互作用場の理論における基底状態である。この基底状態は自由場の理論の基底状態 0\ket{0} とは異なることに注意する。また ϕH\phi_{\mathrm{H}} はHeisenberg描像における場であり,以下では単に ϕ\phi と書くことにする。

やりたいことは,ハミルトニアンが例えば

H=H0+Hint,Hint=d3xλ4!ϕ4 H = H_{0} + H_{\mathrm{int}},\quad H_{\mathrm{int}} = \int d^3x\,\frac{\lambda}{4!}\phi^4

のように与えられているとき,2 点相関関数を λ\lambda の冪級数で表すことである。

HintH_{\mathrm{int}} の影響は 2 点相関関数の次の 2 箇所に現れる:

  1. Heisenberg場の定義:ϕ(x)=eiHtϕ(x)eiHt\phi(x) = e^{iHt}\phi(\mathbf{x})e^{-iHt}
  2. 基底状態の定義:HΩ=0H\ket{\Omega} = 0

したがって,この 2 箇所を自由場の理論の言葉で表すことができれば,2 点相関関数を自由場の理論の言葉で表すことができる。これが具体的にやりたいことである。

Heisenberg場の書き換え

ある時刻 t0t_0 の場の HH による時間発展を考える:

ϕ(t,x)=eiH(tt0)ϕ(t0,x)eiH(tt0) \phi(t,\bm{x}) = e^{iH(t-t_0)}\phi(t_0,\bm{x})e^{-iH(t-t_0)}

となる。ここで λ\lambda が小さいなら,場の時間発展は H0H_{0} によって支配されると考えることができ,これが摂動展開の中心になると期待される。そこで

ϕI(t,x)ϕ(t,x)λ=0=eiH0(tt0)ϕ(t0,x)eiH0(tt0) \phi_{\mathrm{I}}(t,\bm{x}) \coloneqq \left.\phi(t,\bm{x})\right|_{\lambda=0} = e^{iH_{0}(t-t_0)}\phi(t_0,\bm{x})e^{-iH_{0}(t-t_0)}

と定義する。これを相互作用描像の場と呼ぶ。これは自由場である。元の場 ϕ\phi との関係は

ϕ(t,x)=U(t,t0)ϕI(t,x)U(t,t0),U(t,t0)eiH0(tt0)eiH(tt0)(1) \phi(t,\bm{x}) = U^\dagger(t,t_0)\phi_{\mathrm{I}}(t,\bm{x})U(t,t_0),\quad U(t,t_0) \coloneqq e^{iH_{0}(t-t_0)}e^{-iH(t-t_0)} \tag{1}

であり,U(t,t0)U(t,t_0)は微分方程式

iddtU(t,t0)=HI(t)U(t,t0),U(t0,t0)=1 i\frac{d}{dt}U(t,t_0) = H_{\mathrm{I}}(t)U(t,t_0),\quad U(t_0,t_0) = 1

を満たすため,ちょうど相互作用場の時間発展演算子になっていることが分かる。この微分方程式の解は形式的に

U(t,t0)=Texp(it0tdtHI(t)) U(t,t_0) = \mathrm{T}\exp\left(-i\int_{t_0}^t dt'\,H_{\mathrm{I}}(t')\right)

と書ける。これをDysonの公式と呼ぶ。これと式 (1) とから元の場 ϕ\phi を自由場 ϕI\phi_{\mathrm{I}} で書き換えることができた。

基底状態の書き換え

自由場の理論の基底状態 0\ket{0}HH による時間発展を考える:

eiHT0=neiEnTnn0 e^{-iHT}\ket{0} = \sum_n e^{-iE_nT}\ket{n}\braket{n|0}

ここで n\ket{n}HH の未知の固有状態であり,EnE_n はその未知のエネルギー固有値である。

Ω00\braket{\Omega|0}\ne 0 と仮定すると E0<EnE_0 < E_n であるため,T(1iϵ)T\to\infty(1-i\epsilon) の極限で n=0n=0 の項が支配的になる。したがって

Ω=limT(1iϵ)(eiE0TΩ0)1eiHT0 \ket{\Omega} = \lim_{T\to\infty(1-i\epsilon)}(e^{-iE_0T}\braket{\Omega|0})^{-1}e^{-iHT}\ket{0}

となる。この極限において TT の値を有限の大きさだけ変化させることができ,そうすると

Ω=limT(1iϵ)(eiE0(t0(T))Ω0)1U(t0,T)0 \ket{\Omega} = \lim_{T\to\infty(1-i\epsilon)}(e^{-iE_0(t_0-(-T))}\braket{\Omega|0})^{-1}U(t_0,-T)\ket{0}

となる。これで係数を除いて基底状態 Ω\ket{\Omega} を自由場の理論の言葉で書き換えることができた。

相関関数の書き換え

以上の書き換えを組み合わせると x0>y0x^0 > y^0 のとき

ΩTϕ(x)ϕ(y)Ω=limT(1iϵ)(0Ω2eiE0(2T))10U(T,x0)ϕI(x)U(x0,y0)ϕI(y)U(y0,T)0 \braket{\Omega|\mathrm{T}\phi(x)\phi(y)|\Omega} = \lim_{T\to\infty(1-i\epsilon)}(|\braket{0|\Omega}|^2e^{-iE_0(2T)})^{-1}\braket{0|U(T,x^0)\phi_{\mathrm{I}}(x)U(x^0,y^0)\phi_{\mathrm{I}}(y)U(y^0,-T)|0}

となる。ここで規格化条件

1=ΩΩ=limT(1iϵ)(0Ω2eiE0(2T))10U(T,T)0 1 = \braket{\Omega|\Omega} = \lim_{T\to\infty(1-i\epsilon)}(|\braket{0|\Omega}|^2e^{-iE_0(2T)})^{-1}\braket{0|U(T,-T)|0}

で右辺を割れば,完全に自由場の理論の言葉で相関関数を表すことができる。これは x0<y0x^0 < y^0 のときも同様である。したがって,まとめると

ΩTϕ(x)ϕ(y)Ω=limT(1iϵ)0TϕI(x)ϕI(y)exp[iTTdt HI(t)]00Texp[iTTdt HI(t)]0 \braket{\Omega|\mathrm{T}\phi(x)\phi(y)|\Omega} = \lim_{T\to\infty(1-i\epsilon)}\frac{\braket{0|\mathrm{T}\phi_{\mathrm{I}}(x)\phi_{\mathrm{I}}(y)\exp[-i\int_{-T}^{T}dt\ H_{\mathrm{I}}(t)]|0}}{\braket{0|\mathrm{T}\exp[-i\int_{-T}^{T}dt\ H_{\mathrm{I}}(t)]|0}}

となる。nn 点関数については場 ϕI\phi_{\mathrm{I}} を追加するだけでよい。これで λ\lambda について必要な分だけ級数展開することができるようになった。

参考文献

Peskin, M. E., & Schroeder, D. V. (1995). An Introduction to quantum field theory. Addison-Wesley.