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QEDラグランジアンの構成方法

QEDラグランジアンの構成方法について説明します。

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参考文献:(Peskin & Schroeder, 1995)

Dirac場 ψ(x)\psi(x)局所ゲージ変換

ψ(x)eiα(x)ψ(x) \psi(x) \mapsto e^{i\alpha(x)} \psi(x)

の下でラグランジアンが不変であると要請し,そのようなラグランジアンを具体的に構成してみよう。

動機

Dirac場 ψ(x)\psi(x) とMaxwell場 Aμ(x)A_\mu(x) の相互作用理論として素朴に

LQED=LDirac+LMaxwell+Linteraction=ψˉ(iγμμm)ψ14(Fμν)2eψˉγμAμψ\begin{align*} \mathcal{L}_{\text{QED}} &= \mathcal{L}_{\text{Dirac}} + \mathcal{L}_{\text{Maxwell}} + \mathcal{L}_{\text{interaction}} \\ &= \bar{\psi}(i\gamma^\mu\partial_\mu - m)\psi - \frac{1}{4}(F_{\mu\nu})^2 - e\bar{\psi}\gamma^\mu A_\mu \psi \end{align*}

を考えることができる。この理論に関わらず電磁場を含む理論には A0A_0 に関する運動項が存在しないため,それに対応する共役運動量が定義されないという特徴がある。この特徴に関連して理論に負のノルムを持った状態が現れる。しかし,ラグランジアン LQED\mathcal{L}_{\text{QED}} は局所ゲージ不変であるという理由から観測量にそのような物理的に意味のない状態は寄与しない。そこで,QED以外に局所ゲージ不変な理論が存在するかどうか,という自然な疑問が生じる。答えはここで示すようにNoである。

微分を含まない項は,たとえば

mψˉ(x)ψ(x) m\bar{\psi}(x)\psi(x)

のように簡単に構成することができる。

しかし,nμn_\mu 方向の ψ(x)\psi(x) の微分は

nμμψ=limϵ0ψ(x+ϵn)ψ(x)ϵ n^\mu\partial_\mu\psi = \lim_{\epsilon \to 0} \frac{\psi(x+\epsilon n) - \psi(x)}{\epsilon}

となるため,ψ(x+ϵn)\psi(x+\epsilon n)ψ(x)\psi(x) が異なる変換をし,μψ(x)\partial_\mu\psi(x)ψ(x)\psi(x) のような単純な変換をしない。

そこで局所ゲージ変換の下で次の変換則をもつ関数 U(y,x)U(y,x) を導入する:

U(y,x)eiα(y)U(y,x)eiα(x)(1) U(y,x) \mapsto e^{i\alpha(y)} U(y,x) e^{-i\alpha(x)} \tag{1}

そうすると,U(x+ϵn,x)ψ(x)U(x+\epsilon n,x)\psi(x) は局所ゲージ変換の下で ψ(x)\psi(x) と同じ変換をすることがわかる。

そこで共変微分を次のように定義する:

nμDμψ(x)limϵ0ψ(x+ϵn)U(x+ϵn,x)ψ(x)ϵ n^\mu D_\mu \psi(x) \coloneqq \lim_{\epsilon \to 0} \frac{\psi(x+\epsilon n)-U(x+\epsilon n,x)\psi(x)}{\epsilon}

作用をより明示的に表すために U(x+ϵn,x)U(x+\epsilon n,x) を展開すると

U(x+ϵn,x)=1ieϵnμAμ(x)+O(ϵ2)(2) U(x+\epsilon n,x) = 1 - ie\epsilon n^\mu A_\mu(x) + \mathcal{O}(\epsilon^2) \tag{2}

となる。ここで ee は便宜上導入した定数であり,Aμ(x)A_\mu(x) は新しいベクトル場とみなすことができゲージ場という。これを共変微分の定義に代入すると

Dμψ(x)=μψ(x)+ieAμ(x)ψ(x) D_\mu \psi(x) = \partial_\mu \psi(x) + ie A_\mu(x)\psi(x)

となる。

また,式 (2) を式 (1) に代入すると,ゲージ場 Aμ(x)A_\mu(x) は局所ゲージ変換の下で

Aμ(x)Aμ(x)1eμα(x) A_\mu(x) \mapsto A_\mu(x) - \frac{1}{e}\partial_\mu \alpha(x)

と変換することがわかる。この変換則から,Dμψ(x)D_\mu\psi(x) は局所ゲージ変換の下で ψ(x)\psi(x) と同じ変換をすることを確かめることできる。

したがって局所ゲージ不変なラグランジアンを構成するためには

ということが必要になる。

Aμ(x)A_\mu(x) を物理的に意味のあるベクトル場と解釈するためには Aμ(x)A_\mu(x) の運動項も必要である。この項を構成するには次の変換則に目を向けると良い:

[Dμ,Dν]ψ(x)eiα(x)[Dμ,Dν]ψ(x) [D_\mu,D_\nu]\psi(x) \mapsto e^{i\alpha(x)}[D_\mu,D_\nu]\psi(x)

この変換則から

Fμν[Dμ,Dν]=ie(μAν(x)νAμ(x)) F_{\mu\nu} \coloneqq [D_\mu,D_\nu] = ie(\partial_\mu A_\nu(x) - \partial_\nu A_\mu(x))

は局所ゲージ変換の下で不変であることがわかる。これをfield strengthという。したがって局所ゲージ不変なラグランジアンを構成するためには

ということが必要になる。

以上よりくりこみ可能な局所ゲージ不変なラグランジアンは

L=ψˉ(iDμm)ψ14(Fμν)2+cϵαβμνFαβFμν \mathcal{L} = \bar{\psi}(i\cancel{D}_\mu - m)\psi - \frac{1}{4}(F_{\mu\nu})^2 + c\epsilon^{\alpha\beta\mu\nu}F_{\alpha\beta}F_{\mu\nu}

となる。最後の項はパリティおよび時間反転対称性を破るため,これらの離散対称性を要請する場合は

LQED=ψˉ(iDμm)ψ14(Fμν)2 \mathcal{L}_{\text{QED}} = \bar{\psi}(i\cancel{D}_\mu - m)\psi - \frac{1}{4}(F_{\mu\nu})^2

となる。自由なパラメータは質量 mm と ゲージ場 AμA_\mu との結合定数 ee の2つである。このような理論を量子電磁力学(QED)という。

参考文献

Peskin, M. E., & Schroeder, D. V. (1995). An Introduction to quantum field theory. Addison-Wesley.